遠い未来『日本』と呼ばれるこの国の、そもそもの”はじまり”がどんな様子だったのか。
それは、誰も知らないんだ。
だって、そうだろ? この世界は、気が遠くなるくらい昔、人も神も、お天気すらなかった時代に始まったんだから。
でも神々が生まれる さらに前は、天も地も分かれていなくて、何年も煮詰めたドロドロのスープみたいに、全てがごちゃ混ぜのカオス状態だったらしい。
そこで、初めて天地が分かれると……

っと、ミナカヌシ様が成った。
『高天原』と呼ばれている天界に、はじめて成った……つまり、生まれてきた神様だ。
ん? 一番最初の神様なのに、知らないって?
まぁ……それは仕方のないことだろう。なぜなら、ミナカヌシ様は生まれてすぐに隠れてしまったのだから。

だってあの時は、私ひとりぼっちで寂しかったんだもの!
と、いうわけでミナカヌシ様が出てくるシーンはこれで終わりだ。

え? うそ? 私、他にも何か……ないの?
あ、そうそう。
ミナカヌシ様のフルネームは『天御中主神』。
『天の中心を司る主神』という意味の、とても素晴らしい名前を持っている。

へへっ❤
でも、いかんせん、『実績』が、全く、何もないのだ。

え?
正直、名前負けもいいところ。
超空気。
最近では『宇宙の神様』とか言われて、ちやほやされることもあるけど、僕らの神話に宇宙の概念があるとは思えないし、古事記に出てきてもすぐ消えちゃうし、日本書紀の本文にいたっては名前すら出てこないし……ものすんごく影の薄い神様だ。

あぅ……
とは言っても……まぁ……ミナカヌシ様がいなければ、そもそも世界が成り立たないくらい壮大で、影が薄いと言っても、日々の生活では感じ取ることができない宇宙レベルの存在なんだ……って考えたら、やっぱり『最高神』といえる偉大な神様なのだろう。
たぶんだけど。

へへっ❤
それに、最初に生まれてきたのはミナカヌシ様みたいな、何の役にも立たない神様だけではないから、安心してほしい。

…………
そう。
ミナカヌシ様の次に生まれてきたのは、タカミムスヒ様。

と、成った後に、すぐ姿を隠してしまうところは、ミナカヌシ様と変わらない。
だけど、ミナカヌシ様と違って、後でたくさん活躍するシーンがあるんだ。

恐縮です
フルネームは、高御産巣日神。「産巣」は「生す」と同じ意味で、生命や万物の誕生を表す神様といわれている。
ちなみに、神様のことは一人、二人ではなく、一柱、二柱と数えるんだけど、これは古くから神様が神聖な木に降臨すると考えられていたからだとか。
そして、タカミムスヒ様は『高木神』という別名を持っている。その名の通り、木々とも深い関わりを持つ神様なんだ。
まさに樹齢の長い木みたいに、背が高くて、どっしりと落ち着いてて、鳥や動物たちにも好かれて、頼れて、リーダーシップもある。それでいて、ふんわり穏やかな性格で、全然偉そうにしないところがカッコイイ!

ふふっ、ありがとうございます
あ、でも、「カッコイイ」といっても、この頃はまだ男女といった性別の概念がなくて、ミナカヌシ様もタカミムスヒ様も『独神』という男でも女でもない存在だった。
独神のように特別な神様は、対となる相手がいなくても、一柱で子どもを産める。
だから、タカミムスヒ様にはオモイカネやチヂヒメなどのお子さんがいるんだけど、オモイカネは高天原で一番頭がいいし、チヂヒメは今の皇族に繋がる天孫の母親になるし……子孫の活躍を見ても、タカミムスヒ様は別格の神様だと思う。

いいなぁ……タカミィは、いっぱい褒められて

たまたまですよ
正直、ミナカヌシ様なんかより、よっぽど最高神っぽい。

タカミィ……

……コホン..
続いて生まれてきたんは、カムムスヒ様だ。

次に高御産巣日神(たかむすひのかみ)、次に神産巣日神(かみむすひのかみ)です。この三柱の神は、いずれも独神(男女一対の神ではない)として現れ、身を隠しました。
「『誘う神』?」

特別・・・?

うん。私たちにはない、特別な力。特別な『神力』を持った神様

うぅーーん・・・でも、誘うだけでできることなんて、何かあります?『誘う力』なんて、すごい地味じゃないですか
納得できない僕を前に、ミナカヌシ様は慈愛と切なさが混ざり合った不思議な笑みを浮かべて、口を開く。

ーーー
しかし、この続きは『ドン!』とミナカヌシ様を押しのけたカムムスヒ様によって遮られてしまった。
「んふっ❤ 男女が誘い合ってすることなんて1つじゃない❤❤❤」
「んぎゃ!」
結局、僕らはこの時ミナカヌシ様が伝えようとしたことを知ることはできなかった。
あの時、話の続きが聞けていれば、この未来は何か変わったのだろうか。
・・・いや、きっと変わらなかっただろう。
だって僕はどうしたって、イザナミを愛することをやめられないんだから。
神様のインターン生が世界を作る──そんな無茶な話が、実は本当にあった。
次に、国がまだ若く水の上に油が浮いているようで、クラゲが漂っているような時(流より前の10字は仮名文字)、葦の芽が萌えあがるようにして生まれた神の名は、ウマシアシカビヒコジの神(葦の芽を神格化して成長力を表す。男性)、次にアメノトコタチの神(天の根源神)(常はトコと読む、立はタチと読む)、この二柱もまた独神であり、身を隠した。
以上五柱の神は、別天つ神(ことあまつかみ)と呼ばれます。
次に現れた神の名は、クニノトコタチの神(くにのとこたちのかみ)、次にトヨクモノの神(とよぐもぬのかみ)です。この二柱もまた独神であり、身を隠しました。
次に現れた神の名は、ウヒヂニの神(うひぢにのかみ)とスヒヂニの神(すひぢにのかみ)、次にツヌグイの神(つぬぐいのかみ)とイクグイの神(いくぐいのかみ)、次にオオトノヂの神(おおとのぢのかみ)とオオトノベの神(おおとのべのかみ)です。
次に現れた神の名は、オモタロウの神(おもたろうのかみ)とアヤコシネの神(あやこしねのかみ)、次にイザナギの神(いざなぎのかみ)とイザナミの神(いざなみのかみ)です。
以上、クニノトコタチの神からイザナミの神までの神々を合わせて、神世七代(かみよのななよ)と呼びます。最初の二柱の神は独神として一代と数え、次の十柱の神は二柱ずつで一代と数えます。

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